| 4つの作品からなる短編集です。 「永遠の仔」の執筆過程で浮かんできた別の素材やテーマを違う形で表現したいという欲求から生まれた、と作者が語っていますが、「永遠の仔」同様、優しすぎるがゆえに心を病んだ男女の心の交流が主なテーマになっています。 「とりあえず、愛」 子供を殺しそうになったという妻の告白によって崩れかかる夫婦の絆がテーマ。 この作品だけは、いまいちぴんときませんでした。 「うつろな恋人」 過労で神経症になり入院した中年男性。 近くの喫茶店のウェイトレスをしている少女と知り合いますが、少女もかって彼と同じ病院に入院し、今は通院しています。 少女には空想上の恋人が存在し、それによって明るくなって社会生活にもある程度適応できるのですが、男はそれが許せず、少女に対してそんな恋人などいないことを強引に自覚させようとします。 中年男性の少女への思いに共感はするものの、その意固地さゆえの結末に悲しみを覚えます。 「やすらぎの香り」 人に対する優しさ、気遣いが弱さになる典型的な男女の話。 病院の社会復帰病棟で出会った男女が、半年間同棲して問題がなければ周りも結婚を許すという約束で一緒に暮らします。 最後、駅で男性を待つ女性が、ころんで服をよごした少女に語る言葉、「あなたは悪くないよ。少しも悪くないから」、「永遠の仔」でも語られたように、大事な言葉だと思います。 「喪われゆく君に」 コンビニでバイトをしている若者の前で突然死した男性。後日訪ねてきたその妻のアパートに何かを求めて通う若者。 その都度、男性の妻から夫婦で行った場所の写真を見せられ、なぜか、その場所へ自分の彼女と行って写真を撮る若者。 人は自分が求めているもの、そして既に手に入れているものをわかっていないということを言いたいのか、ちょっとわかりにくいものの、引き込まれる話です。 どの作品もある意味で悲しいものの、登場人物に対する作者の慈しみが感じられます。 |