一読して、ごめんなさいと、頭を下げたくなりました。
芥川賞を取った「水滴」のあらすじを新聞等で読んだ時、つまらない話、沖縄の特異性をだしにした話と、批判的な感情を抱き、今まで著者の作品を読んだことがありませんでした。
しかし、この表題作を含む4つの短編を読んだ今、自分の認識の至らなさにほぞをかむ思いです。
「事実は小説よりも奇なり」という格言がありますが、つまるところ、小説は奇なるものを扱った表現手段とも言えます。そういう基準にぴったり当てはまるのがこの短編集です。

戦争で失ったかっての恋人を想うぼけた老女の話。
学級崩壊で精神を病んだ妻と、同じ子供たちを担任して、壊れかけていく夫の話。
野良猫に病的なまでの敵意を抱き、虐待するアパートの住人。そして、いつの間にか自分が猫を虐待していると、周りから糾弾される男の話。

3編は狂気が主題になっていて、読後感もいまいち暗くなるのですが、「帰郷」だけは明るく笑えます。
これも沖縄的な題材と言えるのですが、夫を亡くした老女がどうしても風葬をしたいと、ユタ(沖縄のシャーマン?)に頼み、公園に放置した夫の亡骸に結界を張らせます。その結界の中が見えた若い男性が、その亡骸を台風などから守っていくことで、自分を回復していきます。理由は不明です(^^;
ラストはくすっと笑えます。

ひとつだけ表題作で気に入らないのは、沖縄方言と標準語の混ざった会話です。確かに、沖縄の人間は方言と標準語の混ざった話し方をする場合があるのですが、こんな言い方はしないだろう、少なくとも私の周りではこんな言い方する人はいない、という違和感があります。
他府県の人から見れば、私たちが東北弁の作品を読むような効果を与えているのかもしれませんが。

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