妙なタイトルと、不思議な話。
幻想と現実が入り交じって、論理的な解釈がむつかしい物語です。
もっとも、物語というのは、論理的に解釈するものではありませんが。
登場人物の個性、多彩さに目を見張ります。
加納マルタ、クレタという霊能力を持つ不可思議な姉妹。
赤坂ナツメグ、シナモンというこれもまた奇怪な親子。
この物語の一方の極で、邪悪を象徴する不気味な義兄。
個性的な人々が登場するにも関わらず、主人公はあまりにも平凡で無気力にもみえる男性です。
物語はまず、猫が消え、妻が浮気して家出をします。
妻を取り戻すために、主人公は涸れ井戸に降ります。そして、そこから通じた不思議なホテルと、淫靡な女性。
私のような者だけでなく、多くの人がこの話に惹かれるというのは、何か普遍的なものがあるからなのは間違いないでしょう。もっとも、ものすごく抵抗を感じる人もいるかもしれませんが。
説明可能な範囲で論評すれば、この物語は、人間は自分でも自分の闇を知らないとか、抗いがたい運命に流されて生きていく存在だという、村上春樹の他の物語にも言える特徴を持っています。
主人公が降りた井戸が何であるか、そこから通じたホテルの正体など、推測はつきますが、あまり論理的な表現で評したくはありません。

やや暗い方向に流れていく中で、笠原メイという少女のキャラクターが救いになっています。また、肉体の娼婦から魂の娼婦へ転化した加納クレタなども、男にとってはかなり惹かれる存在です。
村上作品は、みんな、女性が魅力的です。

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