山本周五郎原作、黒澤明脚本の持ち味をうまく仕立てあげた作品です。 険の腕前はすぐれていながら、心優しきため、武士階級では異端児となっている主人公の浪人と、彼の本質を理解して見守る妻。 剣術指南役抜擢の御前試合で、殿様と立ち合って池に突き落としてしまった主人公。殿様が腹を立てたのは、負けたことよりも、大丈夫ですかと勝者にいたわられたこと。ここがこの作品のポイントだと思うのですが、殿様は最後に旅立った浪人を追わせます。この浪人の優しさが剣の道ではかえって人を侮辱するものだということを匂わせながら、なぜ、そういう展開にしたのか、疑問です。 最初に採用を断った理由が、賭試合をしたからということでしたが、話の展開としては、その優しさが不採用の理由だと、私は思ったものです。 断りの使者に対して、妻が放つ捨てぜりふも、監督としては、ここがポイントのつもりなのでしょうが、私には蛇足という気がします。 主人公は寺尾聡、妻は宮崎美子が演じています。はっきり言って、宮崎美子は時代劇には不向きだと思います。しかし、この作品は宮崎美子で持っているところがあります。あのふくよかで無邪気な笑顔、時代劇には合わないものの、この作品の浪人の妻としてはぴったりという、非常に矛盾した印象ですが、そう感じました。 |