まったく期待してなかったのですが、なかなか、どうして、楽しくかつ心にしみいる映画でした。
嵐で揺れる船の大広間を流れていくピアノでの演奏。これがまずきらびやかでこの映画の世界に引きずり込まれます。男どうしでなく、女の子を傍らにおいて流れていけばもっと素敵なシーンだったと思うのですが。まあ、この映画のベースのひとつは男の友情でもあるから仕方ないですか。
次に印象に残ったのは、客の顔を見て、その人生を推察しながら、ピアノで表現するシーン。音楽の才能がない自分には理解できないものの、うらやましく思う境地です。
そして、圧巻は、ピアノ対決。
神速の演奏を終えて、熱を発したピアノ線でタバコに火をつけるシーンには、思い切り笑い転げてしまいました。
ラストもしんみりきます。
タラップを降りる時に、陸地には終わりがないと気づいておびえたこと。ピアノの鍵盤は88個と決まっているから弾けるけど、大都会は無限の鍵盤であり、自分には弾けないと。タラップを降りられない以上、人生を降りるしかないと言う主人公。
馬鹿な話だとは思うものの、何となくわかるような気もします。
最後の小咄だけはよけいだなと思いましたけど。

主役のティム・ロスに覚えがないのですが、ほんとうに船以外の世界を知らないかのような瞳が印象的です。

私が20世紀初期のアメリカ風俗とデキシーが好きだから、気に入ったのかもしれないですが、期待してなかっただけに、拾いものしたような気分です。
劇場で観れば、もっと良かっただろうな、と思います。

戻る