月曜日の夢


「成長率も何とか上向きになったらしいな」
「確かに、俺たちも忙しくなったよな。おかげで毎日疲れている」
「ところでさ、ちゃんとネクタイしめて、満員電車に押し込まれて出勤し、職場に着いて仕事までやったと思ったら、それが夢だったということないか」
「あるある。月曜日に多いみたいだ。朝起きるのが辛くて、現実逃避してるんだろうな。実際に目がさめるとあわくってしまうんだが」
「で、不思議なのはだ、あまりにも生々しい夢なものだから、既に一日過ぎてしまったような気がすることがあるんだ」
「月曜日の朝に実際に出勤したら、もう火曜日のような気がするってことか」
「そう」
「そういえば、そんな時があるなあ。で、木曜日になると翌日が休みのような気がするのにそうじゃなくて、なんかリズムが狂ってしまう」
「これって、結構使えるんじゃないか」
「何に」
「今度のプロジェクトにだよ」
「本気か」
「本気だとも」
「上の反応もだが、下の反応も心配だな」
「技術的には不可能じゃないだろう」
「まあ、そうだが」

「現在の社会状況からして、これ以上の雇用を増やすめどはありません。むしろロボットの高品質化により、人間の仕事は減る一方です。失業を増やさないようにするには、労働時間の削減、休日の増加で対処する以外ありません」
「しかし休日を増やすとなると、趣味やレジャー関係の施設の充実などをはからんとならんからな」
「若いのはいいが、中年以上ともなると休みが増えると逆にとまどってしまうだろう」
「ろくな遊び方を知らないし」
「休日が増えると社会全体の労働意欲が減退して国家の活力そのものが衰える、というシミュレーション結果もでてたな」
「そこでですね、休日は増やさず、あくまでも仕事をしているふりをしてもらう、という結論に達したのですが」
「窓際族が増えると社会の活力はますます減退するぞ」
「実際には出勤させないのです」
「どういうことだ」
「夢を見させるのです」
「夢?」
「そうです。日曜日の晩に特殊な睡眠薬を飲んでもらうことによって、月曜日まるまる一日寝てもらうのです」
「そう都合良く、仕事している夢を見させることが出来るのか」
「そういう装置をこれから開発しなければなりませんが、理論的には可能です。月曜日も仕事をしたという満足感を与える程度のものですから、大ざっぱなものでいいはずです」
「問題は野党と国民が賛成するか」
「強制ではなく、希望者を募るという風にすれば問題ないと思いますが」

「こんなに希望者がいるとは思わなかったな。みんな、仕事がなくても休みをとることに罪悪感を抱いているわけだ」
「遊びに行くとしたら金がかかる、という現実的問題もあるわけだろう」
「それにしても、これだけの人間が月曜日に寝てしまって大丈夫なんだろうか」
「ちょっと不安になってきたな」

「おいおい、日本経済って相当強いんじゃないか。国民の半分以上が月曜日を寝て過ごしても成長率が落ちないぞ」
「アメリカからは火曜日も寝ていろ、と圧力がかかってきているらしい」
「上の方では検討しているらしいぜ」
「うへー」

「火曜日まで寝ててもこんなものか。この分だと水曜日まで寝ていても大丈夫かもしれないな」
「こわいのはだ、ウィークデーすべて寝て、土日だけ起きて過ごすようになるんじゃないかということだ」
「そのぐらいだったらまだいいぞ。そのうち遊ぶのまでめんどくさくなってきて、一週間まるまる寝て過ごすことになるかもしれんぞ」
「げっ。それじゃあ、死んでるのと変わらないじゃないか」
「休日用の夢も作ってやれば、そこそこ幸せな人生なんじゃない」
「うーん」

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