第27話 「さよなら先生夫妻(仮)」 放映日:1974年4月3日(水)脚本:いれぶん

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★野原(十一の夢の中) 
 十一と夏代が紙風船でキャッチボールをしている。
★多摩川の土手
 いきなり、十一の顔面に野球のボールが飛んでくる。
  十一「いて!」
 十一、夢から覚める。 玄が横に座っている。
 少年達「ごめんなさーい!」土手の下に落ちたボールを拾いながら。
  玄  「先輩、大丈夫ですか!」
  十一「大丈夫」にたついている。
 少年達、野球をやってた場所へ戻る。
  玄  「はは!、先輩、何かいい夢でもみてたんですか?。」
  十一、昨夜の空港〜山下公園〜稲葉スタジオの事を思い出す。(回想シーン)
  玄  「そうですか、夏代さんと…。」
  十一「玄、俺は、結婚するぞ。」
  玄  「先輩、起きたところで、さっきの打ち合わせの続きと参りましょう。」手持ちの モデルの写真を見せようとする。
  十一「玄、そんなの後にして、さあ、一枚抜いて、ほら。」トランプを切り始める。
  玄 「先輩。」
  十一「ほら、なくなっちゃう、早く、早く。」
  玄 「分かりましたよ、(小声で)完全にうわついてやがる。」トランプを一枚抜く。
 (トランプは“ハートの6”)
  十一「決まりだ玄、結婚式は6月だ。」
  玄 「はぁ。」
  十一手を羽の様にして、土手の上をぐるぐる回り始める。
  玄 「先輩、そろそろ打ち合わせの方に…。」
  十一、目が回ってそのまま土手から転げ落ちる。
  玄 「先輩!。」心配そうに見る。
  十一、土手の下で、顔面から地面にへばりついている。
  十一「おーう、ここは天国か?」まだにたついている顔面がアップ。
−オープニング「♪そよ風のように生きてゆきたーいの〜…」−

★スタジオ前
 十一と玄、入り口へ向かっている
  玄 「いやあ先輩、先生、懐かしいなあ、元気かな!」
  十一「ハハ、驚くぞ!もう別人みたいになってるからなぁ!」
  玄 「奥さんもいるって、信じられねえな〜」
  十一「さあ、入るぞ」
★スタジオ内
  稲葉「おう、トイチ!」
  十一「あ!先生」
  稲葉「なんだ!昨夜はせっかく本場のチャパティー食わせてやろうと思ったのに」
  十一「はー、ハハ」
  稲葉「用があるとか言ってたが、さてはトカゲの肝入りだから食べたくなかったんじゃないのか!栄養たっぷりなんだぞ」
  十一「いっ!いや!そんなことは…、ハハ」
  玄 「いや〜、先生変わりましたね〜、色黒くなられたし」
  稲葉「そう、これ雪焼けしたの、雪焼け!」
  十一「あ、先生今日のスケジュール決まりましたよ」
  稲葉「トイチ!さっそく今日から仕事かよ!」
  十一「ええ、帰国したばかりだからこそどっさりあるんですよ!」
  稲葉「なんだ!記者会見かよ」
  十一「それもありますし、あとサイン会、そして写真の依頼も先生を待ってましたとばかり来ましたよ」
  玄 「そう、それで先輩と打ち合わせを済ませてきたところなんですよ」
  稲葉「おれよー、久々の故郷だろ、だからさー今日はアルプスにでも登りたかったのによー」
  十一「先生、それは今日一日我慢してくださいよ、ではスケジュール言いますよ」
  稲葉「あ、おまえら干したトカゲの肝を粉末にしたドリンクでもどうだ…チェバェスカ!チェバェスカ〜!」
  十一「あ、いやいや先生いーですよ、お構いなく!」
  稲葉「遠慮するなよ、トイチ」
 チェバェスカ出てくる
  玄 「は!」チェバェスカを見て驚き、固まったようになる
  十一「おい、玄どうした…玄!」玄の目の前で手を揺らす
  玄 「いえ、なんでもありませんよ、なんでも…はー」
★スタジオ前
 十一と玄、入り口から出てくる
  十一「玄何ぼ〜っとしてんだ、変だゾ」
  玄 「先輩、あのチェバェスカさんですか、惚れちゃいました」
  十一「何〜!・・・・一目惚れか、おい!」
  玄 「ええ」にこっと十一の方を見る
  十一「お、おい」のけぞる
  十一「どこがいいんだよ、あんなの」
  玄 「いや〜、日本人の女にはない魅力があるというか」
  十一「そうか毎日モデル見て日本の女に飽きてるからかもな…、だけどな、相手は人妻だぞ、それも先生の」  
  玄 「わかってますよ、先輩、じゃー撮影は午後2時でしたね、待ってますよ」
  十一「ああ」
 玄去る
  十一「先生遅いな」
  稲葉「おう、トイチ、行かなきゃダメか!」スタジオから出てくる
  十一「ええ、もう大勢の人が待ってるんですよ、さあ記者会見行きましょう」
★栗山家リビング
 夏代ソファーでぼーっとしている
 秋枝入ってくる
  秋枝「あれ、姉御今日元気ねえな」
  夏代「そんなことないわよ!」作り笑いを見せる
  秋枝「ジャックか!今日、一日中忙しくていないらしいからな」
  夏代「何いってるのよ、いなくて静かでいられるから、のんびりしてるだけよ」
  秋枝「またまた、むりしちゃって…結婚きまったのかい、昨日空港で話し合ったんだろ」
  夏代「出来るわけないじゃない、資金もないのに」
  秋枝「それもそうだな、あのジャックの稼ぎじゃ10年以上待たされるかもな」
  夏代「もーう、誰も結婚するとも言ってないのに」
★公園
 十一と玄とモデルがいる
  玄 「もう2時15分ですよ、先生ほんとに来るんですか」
  十一「もう少し待ってろ、記者会見終わったら来るって言ってたんだがな」  
 
  玄 「記者会見長引いてんですかね」
  十一「いや、俺が抜ける時にはもう終わり掛けてた筈だが…、おい玄、ちょっとスタジオ言って見てくるから待ってろ」
  玄 「はぁ」
 十一、公園の外へ走りタクシーを止める
        

―[Part2]―

★スタジオ前
 タクシー止まり十一出てくる
 十一支払いを済ませスタジオの入り口へ走る
★スタジオ内 
 十一入ってくる
  十一「先生いないみたいだな…」
  十一「ん!」机の上のメモを発見して見る。
 メモ=「十一よすまん、やはりアルプスへ行ってくるよ、お土産期待していてく
れ」
  十一「先生!なにがお土産ですか!」半泣き状態の顔になる
 電話が鳴り十一受話器を取る
  十一「あ、もしもし稲葉勇作スタジオ・・・、おう玄か、今着いた所だ、タイミ
ングいいな…あっ玄、撮影は中止だ!いいかモデルを返して、その近くにレンタカー
屋があったろ、そこでレンタカーを借りてこちらへ来てくれ、…何ぃ!訳は後だ、大
至急だ!頼むぞ!」
 十一、電話を切り、いらいらしながら奥の部屋へ入ると、ソファーで布団に包まっ
て寝ているチェバェスカを発見する
  十一「はっ!」
 チェバェスカ、目を覚まし十一を見る
  十一「は、はう、でゅうー、ゆー、でゅうー、にー、はお…何て言えばいいのか
な?ははは!」
  チェバェスカ「(体を起こし)オー、ジュウイチサンネ」
  十一「え、あれ、あなた日本語シャベレルノ?」
  チェバェスカ「エエ、スコシネ、ユウサクト、コトバ、オシエアッタヨ」
  十一「あ、ああソウデシタカ!オジョウズデスネ」
  チェバェスカ「ナニカ、タベルモノ、ツクリマショウカ?」
  十一「いやいや、それより勇作さん何時頃までココにイマシタカ?」
  チェバェスカ「アー、サッキマデ、ココ、イタヨ」
  十一「何ですって、(独り言で)じゃーまだ駅まで着いてないかもな…(部屋を
出ながら)ドウモ、アリガトウ」
  チェバェスカ「(手を振りながら)グッバーイ!サヨナラネ」
  十一「(独り言で)しかし、昼間から寝てるなんて、どこか具合でも悪いのかな
?…」
★スタジオ前
 十一出てくる
  十一「(いらいらした様子で)玄のやつ遅いな」
 十一スタジオから離れる
  十一「あれ?」
   玄 「(声だけ)先輩、おまたせ!」
  十一「何だこれは」
   玄 「え!」
 玄、タンデム車(二以上の乗車装置及びペダル装置が縦列に設けられた二輪の自転
車)を用意していた 
  十一「バカヤロー!(頭をぶっ叩く)」
   玄 「(頭を押さえながら)先輩、これでもレンタカーじゃないですか、自転
車という車でしょ、はは」
  十一「バカ、駅まで2キロもあるんだぞ、先生が駅へ着くまで先回りして行かな
いといけねーのに、これじゃー先に着かれるじゃねえか、山へ行かれりゃーどうする
んだテメー!」      
   玄 「え!先生また山へ!」
  十一「しかたねえ、これでレンタカー屋まで行って交換だ!急げ玄」
   玄 「はい、先輩」
 玄、前に乗り、後ろに十一が乗ろうとしてる所で動かしてしまう
  十一「バカヤロー!まだ早い早い玄」
   玄 「(後ろを向き)はー!先輩すいません」  
 十一やっと乗れたが、玄がペダルを漕ぐと十一の足にペダルがぶつかるなどしてま
るでタイミングが合わない
  十一「何やってんだ玄!」
   玄 「先輩こそ合わしてくださいよ!」
  十一「何いいやがる、おっと、おおお…」
 1メートル程進みかけたが、真横へ転倒してしまう
  十一「いてー、もういやだ!」
   玄 「あいたたた(額から出血している)」
 再び起こして何とかよろけながらも進んで行った
★赤山通り
 中古のカローラに交換後の十一と玄 
  十一「ようし、先生の駅までのルートはこの道だ、急げ」
   玄 「まだ駅まで辿りついてなきゃいんですがね」
  十一「よく見てろよ玄」
   玄 「はい、あ、あの子グラマーですね、先輩!」
  十一「バカ!先生捜せって言ってんだ(ぶっ叩く)」
   玄 「はー!また血が(押さえていたハンカチが真っ赤に…)」
★駅附近
  十一「くそう、もう駅だぞ、遅かったか」
   玄 「あ、あれは」
 駅の入り口に入る寸前の稲葉先生を発見する
  十一「あ、お、お、セーフ!玄、車止めてくれい」
   玄 「はあ」
 カローラ止まり扉が開くと十一降りてすぐ稲葉先生のほうへ駆け寄る
★駅
  十一「先生、先生、先生、はー!間に合った」
  稲葉「おうトイチー!」  
  十一「先生、どうしたんですか撮影もサイン会もあるってのにすっぽかして」
  稲葉「トイチー許せよ、行かせてくれ、な、お土産買って来てやるからよー」
  十一「なにがお土産ですか、そんなものいりませんから、さあ行きましょう、サ
イン会ならまだ間に合います、ファンを裏切るのだけはよしましょうよ」
 十一稲葉先生のリュックを引っ張って連れて行く
  稲葉「トイチ小せーぞおまえ、サイン会みたいなことよりなー、山のようなデ〜
ンと…」
  十一「わかりました先生、それはまた後日にでも、とにかく今日は小さな仕事で
もやっておいて下さいよ、先生もご存知でしょ今日の報酬でスタジオの借金がかなり
返せるんですよ」
  稲葉「スタジオ!そんなもん、もーどうでもいいんだよ」
  十一「え、どうでもいいって(動きが止まる)」
  稲葉「俺はなー、またカラコラムへ戻るよ、そして永住するんだよ」
  十一「なんですって」
  稲葉「・・・・・・・」
  十一「先生・・・・」
  稲葉「(にやりとして)冗談だよ、トイチ、悪かった、さあサイン会行こう」
  十一「(半泣き状態で)はは…、何だ先生冗談キツイんだから」
 玄が乗って待つカローラのほうへ歩いていく
★カローラ内
 十一と先生が後部座席に乗り込む
  十一「ようし玄、サイン会会場へ急いでくれ」
   玄 「ええ先輩」
  十一「モデルにゃーわるいことしたが、玄、おまえラーメンでもおごっといて
やってくれ」
   玄 「何で俺が…わかりましたよ、ちぇっ!」
★新宿サイン会会場前
 カローラから降りる十一と稲葉先生
  十一「じゃー玄、レンタカー返しといてくれ、頼むぜ」
   玄 「わかりました、先輩」 
 カローラ走り出す
   玄 「そうだ、チェバェスカさんスタジオで一人で寂しがってるんじゃないか
な、ちょっと寄ってみるか」
 カローラ方向を変え、スタジオへ向かう
★新宿サイン会会場内
 サイン会途中
  稲葉「さあ、お次の方、…あれ夏代さん」
 夏代の後にも冬子、秋枝、阿万里が並んでいる
  夏代「先生私達、ファンの方あまり並ばないんじゃないかと思って心配できたん
ですけどその必要なかったですわ。こんなに物凄い行列になるなんて」
  稲葉「ありがとう夏代さん、それに君達も、嬉しいよ」 
  十一「バカヤロー!先生をなめてんのか、先生の名はなー日本中に知れ渡ってん
だぞ今からもっと増えるぞ」
  夏代「悪かったわ、そしたら先生一人じゃ大変ね」
  冬子「私達もサイン書くの手伝っちゃおうかな」
  十一「だ、誰が君達のサインなんか欲しがるんだ、まったくー」
  夏代「先生、記者会見も見ましたわ」
  稲葉「そうかいありがとう」
  秋枝「結構色男に映ってたよ」
  稲葉「あっ、これ雪焼けしたの、雪焼け!」 
  秋枝「・・・・・・」     
★スタジオ前
 カローラが停車し、降りた玄がスタジオへ入る
★スタジオ内
 玄、階段を降りてチェバェスカのいる奥の部屋へ…
   玄 「あは・・・・(チェバェスカを見つけにやりとする)」
 チェバェスカ、ソファーの腰掛けている
    チェバェスカ「イラッシャイ!」
   玄 「あ、日本語できるんですねー、OH素晴らしい」
    チェバェスカ「アナタゲンヤサンデシタネ」
   玄 「覚えていてくれましたか感激だな〜」
    チェバェスカ「アラ、オデコニチガ」
 チェバェスカ玄の額の出血の跡を見つける
   玄 「あ、これ大したことないんですよ」
    チェバェスカ「ダメダメ、テアテシテアゲル」
 チェバェスカ救急箱を持ってきて玄の手当てをする
   玄 「いや〜、優しいな〜(とても嬉しそうな顔をしている)」 
    チェバェスカ「モウダイジョウブヨ」
   玄 「ありがとう(チェバェスカの両手を握る)…そうだ今から東京見物行き
ませんか」    
    チェバェスカ「トウキョウケンブツ?」
   玄 「ええ、ちょうど自動車、解かります?・・カー乗ってきたんですよ」 
    チェバェスカ「ソーウ!」
   玄 「ええ、さあ行きましょう、どうぞどうぞ」
 玄、チェバェスカをやや強引な感じで表へ連れ出しカローラでドライブへ…
       ―この続きはまたまた後日に、お楽しみに―

―[Part 3]―

★新宿サイン会会場内
 出口へと向かう冬子、秋枝、阿万里そして、その最後尾に夏代
  秋枝「あ〜あ、腹ッ減った!これから飯食いに行くんだろ」 
  冬子「私はこれからデコ達とドライブの約束があるの」
  秋枝「ドライブって誰か車運転出来る知り合いでもいるのかい?」 
  冬子「うん、ほら前に私達のお部屋が2階に引越しするときに手伝ってくれた元
G大応援部の男の子達二人のうち、植松君ってのが配達関係の仕事に就職したんで免
許とったの」
  夏代「ああ、あの威勢のいいお兄さん達と一緒に行くのね」
  冬子「うん」
  秋枝「あー、植松ってデコのボーイフレンドとかいう、その後デコとの進展はあ
るのかい?」
  冬子「う〜ん、相変わらずってとこね」
  秋枝「フー子、おまえとは?」
  冬子「あるわけないでしょ、ただのボーイフレンドのままよ…」
  阿万里「私ならあんな力持ちの人が身近にいたら好きになっちゃうわ、きっと」
  冬子「マリー、男の人ってただ力持ちなだけじゃだめよ、もう少し大人になれば
わかるわ」
 夏代の前3人が話しで夢中になってる時、何処からともなく… 
  十一「(小声で)あねご、あねご」 
 夏代が振り向くと、廊下の曲がり角から手が出て“おいでおいで”をしている
  夏代「?」
 夏代、戻って角を曲がる
  夏代「あら、十一さん」
  十一「ああ、君、今日は先生のサイン会を盛り上げる為に来たとか言ってたけ
ど、本当は僕に会いに来たくて来てくれたんだろ…ハハ、わかってるんだから」
  夏代「ふざけないでヨ!誰があんたなんかに会うためだけに、わざわざ忙しいの
に来るもんですか!こんな所で呼び止めないでくれる!」
 夏代、十一の足を思いっきり踏みつけて、姉妹達のところへ戻る
  十一「ぎゃ〜!」
★新宿サイン会会場出口
  秋枝「あれ、姉御どうしたんだろ?」
 夏代が駆け寄ってくるのが見える
  秋枝「ああ、姉御どうしてたんだい?」
  夏代「うん、ちょっと蟹の足踏んづけて来たのよ」
  阿万里「蟹の足?」
  秋枝「ああ、フー子(笑いながら)蟹の足だって、はははは」
  冬子「や〜ね!また言ってる、あれはちょっと聞き間違えしただけよ!もう止し
てよ秋ねえったら!」 
  一同「はははは…」
  夏代「さあ、じゃーフー子、私達はレストランへお食事でも行くわね」
  冬子「うん、じゃー私は待ち合わせの場所へ行くわ!」
  夏代「行ってらっしゃい!」
  阿万里「フー子姉ちゃん頑張ってね!」 
  秋枝「うまくやれよ、おい!」
  冬子「そんなんじゃないって!…まあいっか、行ってくるわ!」
 冬子と夏代達は二手に分かれる
★スタジオ附近の夜道
 帰途の十一と稲葉
  稲葉「おい、トイチよ、何だか片足引きずってるみたいだけど、どうかしたのか
?」
  十一「ああ、ちょっとさっき猛獣に足を踏まれまして…けど、もう大丈夫です
よ」
  稲葉「猛獣に?…アフリカでもないのにそんなの出るもんか!」
  十一「はははは…!」
  稲葉「もし出てもえらい騒ぎになってるぞ!」
  十一「ええ、先生冗談に決まってるじゃないですか!」
  稲葉「はは、はははは・・・!」
  十一「はははは…!」
  稲葉「ところでアフリカと言えば、ケニンゴのお前のご両親は元気かい!」
  十一「ええ、何とか元気に暮らしてるみたいですね」
  稲葉「おまえオフクロさん達と会えなくて寂しいだろ?」
  十一「ええ、だけどこっちにもオフクロ代わりがいますから大丈夫ですよ!」
  稲葉「オフクロ代わり?!」
  十一「ええ、先生もよ〜くご存知の方じゃないですか!」
  稲葉「俺も?!」
  十一「ええ、お忘れになりましたか…先生もう完全に日本人離れされてしまいま
したか、悲しいなあ〜」
  稲葉「誰だっけ?」
  十一「ああ、そうだ先生これから飯屋でも行って今日は外食にしましょう!」
  稲葉「うん…そうするか、お前との再会も祝いたいしな」
 十一と稲葉、方向を変えて少し歩く
★赤とんぼ前
  稲葉「赤とんぼ?!」
  十一「ええ、さあ先生入りましょうよ」
  稲葉「待てよトイチ!おキヨおばさんのいない赤とんぼなんて俺は止すよ!」
  十一「まあ、先生、とにかく入ってみて下さいよ! さあさあ〜」
  稲葉「おい!」
 十一、稲葉の手を引っ張って無理矢理中へ連れて行く
★赤とんぼ内
 稲葉、入ったとたん目の前にキヨの姿に気が付いて驚き直立不動になる
  稲葉「お、おキヨさん!」
  きよ 「あら、どなたでしたっけ?」
  稲葉「え!(更にショック)」
  十一「おばさんお忘れですか?ほら稲葉先生ですよ」
  きよ 「え!先生?…(稲葉をよく見る)まあ〜!そうだわ、確かに稲葉先生だ
わ!変わったわねー」
  稲葉「あー、ちょっと色黒くなったでしょ! これ雪焼けしたの、雪焼け!」
  きよ 「それだけじゃーないわよ、どこの外人さんがいらしたのかと思って…、
まあ掛けて話しましょ、そんなとこ突っ立っててもなんだから」
 稲葉、十一座る
  稲葉「やー、おきよさんが戻ってたなんて思わなかったよ…お帰りなさい!」
  きよ「先生も半年ぶりの帰国なんですってね…ご苦労様!」
  稲葉「うーん、半年だけだけどいろいろあって、結構長かったような気がする
なー…おきよさん戻って来たの最近かい?」
  きよ「そうなの…年老いた母親を一人にしておけないからと、そのまま田舎に残
るつもりだったけどさ、兄夫婦が世話してくれるって言ってくれてね、戻って来れた
のさ!」  
  稲葉「ふうーん、そうだったの…ようし今夜は俺とおきよさんの再会祝いだ!
ぱーっとやろう!なトイチ祝ってくれるよな」
  十一「勿論ですとも!」
  稲葉「おきよさん、これからもこのトイチのオフクロ代わり頼むな!」
  きよ「わかってるわよ!」
  稲葉「よーうし!飲むぞ、おきよさんどんどん出してくれ」
  きよ「あ・い・よ!」    
★深夜・八王子の静かな道路
 玄とチェバェスカ、ドライブ中…
  玄 「やあ、今日は楽しかったですねー。 そろそろ帰りましょうか?」
  チェバェスカ「ソウネ!ゲンヤサン、トッテモタノシカッタワ、アリガトネ!」
  玄 「いえいえどういたしまして。 はははは…(照れる)」
 突然、ガタガタっという音とともに自動車のスピードが落ちる
  玄 「あ、あれ故障かな!」
 玄、すぐ近くにホテルがあるのを発見する
  玄 「あ!修理よんでもこんな深夜じゃすぐに来ないだろうなー。仕方がない、
あのホテルを利用しましょう」
  チェバェスカ「ホテル?…トマルノデスカ!?」
  玄 「ええ」 
  チェバェスカ「ユウサク、シンパイスルネ!」
  玄 「大丈夫ですよ、朝になったら修理呼んですぐに帰りましょう!」    
  チェバェスカ「ソーウ(心配そうに…)」
   玄、スピードの遅い自動車をなんとかホテル横の専用駐車場(屋外)へ止める 
★同じく八王子の静かな道路
 運転席に植松、助手席に平塚、後部座席に冬子と秀子(袋いっぱいのお菓子を間に
置いて)でドライブ中… 
  秀子「植松君、お菓子食べる?」
  植松「おーすっ!」
 秀子、前の席の植松の口もとまでお菓子を持っていく
  秀子「はい、あーん(食べさす)」
 冬子も同じく平塚に…
  冬子「あーん(食べさす)…どう美味しい?」
  平塚「うーっす!」  
  冬子「(腕時計を見て)私そろそろ門限だわ。 帰らなくっちゃ!」
  秀子「いいじゃない今日一日ぐらい。 お姉さん知ってんでしょ、この事(お菓
子を頬張りながら)」 
  冬子「ダメダメ!うちの姉御に“特別”はないんだから」
  秀子「そっか、残念ね。 引返そうか」
  冬子「うん。 植松君頼むわね!」
  植松「おーすっ!」
  秀子「あれ!あそこ、社長さんじゃない?」
  冬子「社長さん?…どれ、どこどこ…あれ似てるわね」
  秀子「そうでしょ!」
 丁度、玄らがホテルへ入るところで差し掛かり目撃する
  冬子「だけど、こんなところにいるわけないじゃない社長さん。 それにあの外
人さんみたいな女の人は誰よ」
  秀子「そうね!ジャックさんと違って個性のなさそうな顔だから、そこらに似た
人いっぱいいるんだわ、きっと」
  冬子「さ、行きましょ」
  秀子「おお!植松君飛ばして!!」
  植松「おーすっ!」
★栗山家玄関
 十一帰宅する
  十一「た・だ・い・まっ(ほろ酔い状態で)」
 夏代、慌ててリビングから出てくる
  夏代「あ、十一さん、丁度よかったわ!稲葉先生から電話よ!緊急だって」
  十一「先生から!」
 十一、急いでリビングの電話機へ向かう
  十一「(足が絡まり転倒)いて!」
  夏代「あらあら!大丈夫?」
  十一「(腰を抑えながら起き上がり)ああ!」
★リビング
 十一、受話器をとる
  十一「もしもし、大場ですが!先生!先生…」
  稲葉(電話の声)「おう!トイチかー!チェ、チェバェスカがいないんだよー
!」
  十一「え、チェバェスカさんが!…」
         ―この続きはまたまた後日に、お楽しみに―

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