第34話「遅ればせの新婚旅行?」 放映日:1974年6月19日(水) 脚本:てつまにあ

>戻る

☆寝室(十一の夢)
 家財道具に取り囲まれ、子供のおもちゃが辺りに散らばっている
 十一、どてら姿で子供を抱いている
 夏代、頭にネットをかぶりネンネコで赤ん坊を背負って、内職の電飾飾りを作っている
 二人の周りを3人の子供が遊びまわっている
  十一「おい、なんでこんなに産んだんだよ」
  夏代「あなたが産ませたんじゃない」
  十一「だからって、こんなにたくさん。部屋だって狭いのに」
  夏代「あなたの稼ぎが悪いからでしょ。3流週刊誌の表紙しか仕事がないから、こんな内職までしなくちゃならないんじゃない」
  十一「それは判ってるけどさ」
  夏代「融通はきかないし世渡りは下手だし・・・結婚するんじゃなかった」
  十一「そんな事言うなよ」
 遊びまわっていた子供に抱きつかれ、十一ひっくり返る。顔の上に子供たちが乗っかる
  十一「ウギャ、やめろ、やめろ、夏代、助けてくれ〜」
  夏代「フン!知るもんですか」
  十一「苦しい〜助けて〜(もがく)」

☆寝室(現在)
 十一、ベットの上でもがいている。顔の上に枕が乗っている
  十一「助けてくれ〜、夏代〜、苦しい〜」
 夏代、入って来る
  夏代「(枕をどけて)十一さん、十一さん(揺り起こす)」
  十一「(目を覚まし)へ?」
  夏代「どうしたのよ?」
  十一「あ、夏代!俺が悪かった。稼ぎも悪いのに、こんなに産ませちまってさ」
  夏代「ええ?」
  十一「これからもっと稼いで、お前に内職なんかさせないよ!だから離婚だなんて言わないでくれ!な、頼む!」
  夏代「何言ってるのよ?」
  十一「(抱きしめて)ずっと俺の傍にいてくれ!愛してる!愛してる!」
  夏代「ちょっと、寝ぼけないでよ(頬を叩く)」
  十一「ん?(見回し)あ?あ、夢か・・ハハハ、ビックリさせやがって」
  夏代「どんな夢みたの?」
  十一「そりゃお前、地獄みたいな夢でさ・・」
  夏代「へえ〜」
  十一「いいだろ、どんな夢だって」
  夏代「俺の傍にいてくれって、言ってたわよね?」
  十一「気のせいじゃないか」
  夏代「愛してるって言ったでしょ?」
  十一「そうか。ふ〜ん(立ち上がり)さ、顔洗ってこよう(出て行く)」
  夏代「(クスッと笑い)素直じゃないんだから」
―オープニング―

☆リビング
 食事している面々
  信「このカブの漬物は美味しいねえ」
  夏代「ホント?(器を十一の前に持っていく)」
  信「おいおい」
  秋枝「親父、辛抱しな。すぐ終るから」
  夏代「ねえ、食べてみて」
  十一「(食べて)うまい」
  夏代「良かった」
  冬子「飽きもせずによくやるわよ」
  秋枝「(カブの器を信の前に)はいよ」
  信「すまんね」
  十一「俺、お前に内職なんか絶対させねえからな」
  夏代「まだ気にしてるの?ばかね」
  冬子「何の話?」
  夏代「夢よ」
  冬子「どんな夢?」
  十一「もう最悪」
  秋枝「夢ん中で、姐御が内職してたのかい?」
  十一「ああ、ネット被ってネンネコ背負ってさ、内職しながらあんたの稼ぎが悪いからよって」
  冬子「キャハハ、何それ」
  十一「笑い事じゃねえよ」
  冬子「でもさ、案外まさ夢かもよ」
  秋枝「稼ぎが悪いってのは、当ってるしな」
  十一「そりゃそうだけど・・」
  冬子「夏姉ちゃんが内職する日も近いかもね」
  十一「そんな・・」
  夏代「あんまりいじめないでよ」
  十一「俺、これからガバッと稼ぐからさ」
  夏代「判ってるわよ、頑張ってね」
  十一「おお!あんな格好させてたまるかってんだ!(ご飯をかき込む)」
  冬子「よっぽど酷い夢だったのね」
  秋枝「張り切り過ぎてドジ踏まなきゃいいけど」

☆「シャングリラ」店内
 秋枝、レジの所で伝票を整理している
 客ー今村、入って来る
  今村「ヨッ!」
  秋枝「これはお珍しい」
  今村「(座って)コーヒー」
  秋枝「コーちゃん、コーヒー」
  孝夫「はい」
  秋枝「ずいぶんご無沙汰でしたね。また悪さでもしてたんでしょ」
  今村「とんでもない。仕事だよ」
  秋枝「どうだかね」
  孝夫「ママさん(カップをカウンターに置く)」
  秋枝「(今村の前に運ぶ)」
  今村「(飲んで)前から気になってたんだけどさ、あのパネル、稲葉勇作だろ」
  秋枝「わかるの?」
  今村「わかるさ」
  秋枝「へえ、だてに広告屋やってる訳じゃないんだね」
  今村「相変らずだな。何でこんなパネル飾ってるんだい?山登りが趣味って訳じゃないんだろ?」
  秋枝「稲葉勇作の一番弟子が姉貴の亭主なんだ」
  今村「ほう、カメラマンか」
  秋枝「そう、3流週刊誌の表紙撮ってる貧乏カメラマン」
  今村「どんな写真?」
  秋枝「どんなって・・(雑誌ラックから一冊取り)これだよ(週刊ドリームを見せる)」
  今村「(手に取り)へえ、なかなかいいじゃないか」
  秋枝「これが?」
  今村「ああ、センスも腕も良いよ」
  秋枝「そうは見えないけどねえ」
  今村「今度の広告で、新しいカメラマン使おうと思ってたんだけど、どうかな?」
  秋枝「どうって?」
  今村「仕事頼めるかな?」
  秋枝「ええ?」

☆スタジオ居間
 十一、ゲン、スタジオから出てくる
  ゲン「今日は、順調に終りましたね」
  十一「ああ、これもお前が連れてきたモデルがいいからだな、ハハハ」
  ゲン「はあ?」
  十一「そうだ、美味いコーヒーがあるんだ。入れてやろう。お茶菓子のクッキーもあるぞ」
  ゲン「先輩、頭でもぶつけたんですか?」
  十一「お前には日頃から世話になってるし、少しくらいサービスしなくちゃ、ハハハ」
  ゲン「気持ち悪いなあ・・あ!ダメですよ、これは!(胸のポケットをしっかり押さえる)」
  十一「ええ?」
  ゲン「これは銀行に入れる大事なお金なんですから!」
  十一「バカヤロウ!お前のシケタ財布なんか、誰があてにするか!」
  ゲン「本当に?」
  十一「あたりめえだ!人が恩返しし様と思ってるのに、薄ぎたねえ想像しやがって(座る)」
  ゲン「そうですかあ。いやあ、ホッとしましたよ(座る)」
  十一「(コーヒーを入れて)ところでな、ゲン。お前にちょっと、頼みたい事があるんだけどなあ」
  ゲン「ほらきた、ほらきた」
  十一「仕事なんかねえかなあ」
  ゲン「仕事?」
  十一「ああ、お前の薄い顔でも、雑誌社や広告会社に知り合いがいるだろ?」
  ゲン「そりゃ、まあ」
  十一「CMでもヌードでも何でもやるからさ。ちょっと紹介してくんねえかな」
  ゲン「どうしたんですか、急に」
  十一「いや、俺も扶養家族が出来たし、もう少し稼ごうかなって思ってさ、へへ」
  ゲン「ああ、夏代さんの為ですか」
  十一「あいつにネット被せる訳にいかねえからな」
  ゲン「何ですか?それ」
  十一「実は今朝な・・そんな事はどうでもいいんだよ!」
  ゲン「しかし結婚も大変ですよねえ。結婚式と新婚旅行が済んだら、今度は生活の心配ですからねえ」
  十一「まあな」
  ゲン「苦労しますよねえ・・あら?先輩、新婚旅行に行きましたっけ?」
  十一「新婚旅行?そういえば、行ってねえな、ハハ」
  ゲン「あ〜あ、夏代さん、今ごろ悲しんでるだろうなあ」
  十一「そんな事ねえだろ。あいつ、何にも言わねえもん」
  ゲン「バカですねえ。夏代さんはね、先輩に金が無いからじっと我慢してるんですよ」
  十一「ええ?」
  ゲン「毎日台所の隅で“どうして、こんな人と結婚したのかしら”って、泣いてるかもしれませんよ」
  十一「ま、まさか」
  ゲン「可哀想になあ」
  十一「泣いてるかな?」
  ゲン「味噌汁に涙がポタッと入ったりしてなあ」
  十一「(立ち上がり)あいつが泣いてる・・味噌汁が泣いてる(夢遊病者のようにスタジオへ)」
  ゲン「あらら、またおかしくなっちゃった」

☆台所
 夏代、玉ねぎを刻んでいる
  あまり「(入って来て)夏姉ちゃん、靴が小さくなっちゃった」
  夏代「この前買ったばかりじゃない」
  あまり「だって、成長期なんだもん」
  夏代「判ったような事言って・・あ(目を水で洗い)マリー、タオル取って」
  あまり「(渡して)どうしたの?」
  夏代「(目を拭き)玉ねぎが目にしみちゃったのよ」
  あまり「大丈夫?」
  夏代「ええ・・靴は今度の休みでいいでしょ?」
  あまり「うん(出て行く)」

☆玄関ロビー
 十一、心配げな顔で帰って来る
  あまり「お帰りなさい」
  十一「ああ・・あいつどうしてる?」
  あまり「台所で泣いてる」
  十一「え!ホントか!」
 十一、靴を脱ぎ散らかし、慌てて台所のドアを開ける

☆台所
 夏代、背中を向けタオルで目を拭いている
  十一「夏代!」
  夏代「(振り返り)お帰りなさい」
  十一「(駆け寄り抱きしめて)俺が悪かった!許してくれ!お前を愛してる!愛してるんだよー!」
  夏代「どうしたのよ」
  十一「愛してる!愛してる!」
  夏代「十一さん、しっかりしてよ」
  十一「(身体を離し)今、泣いてたんだろ?」
  夏代「ばかね。玉ねぎが目にしみただけよ」
  十一「玉ねぎ?」
  夏代「夕飯作ってたら、玉ねぎが目にしみちゃったの」
  十一「でも俺と結婚したの後悔して、毎日、便所の中で泣いてるんだろ?」
  夏代「ええ?ちょっと落ち着いてよ。そんなことないわよ」
  十一「ほんとか?」
  夏代「当たり前じゃない」
  十一「そうか・・良かった」
  夏代「なあに、またへんな夢でも見たの?」
  十一「え?ま、まあ、ハハ」
  夏代「愛してるって叫んでたわね?そんなに愛してくれてたの」
  十一「あ、当たり前だろ」
  夏代「もう1回言って」
  十一「やだよ」
  夏代「そんな事言うと、ホントに泣いちゃうから」
  十一「脅かすなよ」
  夏代「じゃ、言って」
  十一「あ、あい、愛してる」
  夏代「私も(抱きつく)」

☆玄関ホール
 あまり、台所の中を覗いている
 冬子、秀子と一緒に帰って来る
  冬子「そんなとこで何してるのよ?」
  あまり「シー!(口に指を当てる)」
 冬子と秀子、顔を見合わせて、あまりの傍に行き覗く

☆台所
 十一と夏代、しっかり抱き合い顔を近づける
  冬子「キャッ!」
 十一と夏代、慌てて離れる
  十一「な、なんだよ、お前ら」
  秀子「へへへ、お邪魔しちゃったみたいですね」
  十一「うるせえ!ノゾキ娘はさっさと消えろ!」

☆冬子の部屋
 冬子、秀子、入って来る
  秀子「驚いたわね(座る)」
  冬子「ホント(座る)」
  秀子「なんかさ、愛情がビンビン伝わってくる感じ」
  冬子「何もあんな所で・・」
  秀子「愛し合ってる二人には、押さえようとしても押さえられない時があるのよ」
  冬子「へえ、そんなもんかしら」
  秀子「そう、求め合っちゃうもんなのよ」
  冬子「恋人もいないくせに、判ったような事言って」

☆リビング
 食事している面々
  十一「(秀子に)おい、最近やけにただメシ食いに来やがるな」
  秀子「色々相談があるもんで、ね?」
  冬子「え?ええ、勉強の事や何かで」
  十一「何が勉強だよ。遊ぶ事ばっかり考えてるくせに」
  冬子「何しようが私たちの勝手でしょ」
  十一「折角心配してやってんのに」
  冬子「大きなお世話」
  十一「チェッ、人の気も知らないで」
  あまり「お兄ちゃんたち、さっきキスしてたの?」
  信「ウグッ(ご飯が喉につまる)」
  十一「ば、バカな事言うなよ、ハハハ」
  夏代「やあね、マリー、ホホホ」
  秋枝「どこで?」
  あまり「台所」
  秋枝「今度は台所か」
  冬子「他にもあるの?」
  秋枝「この前は洗面所。その前は玄関。洗濯物の影ってのもあったよな?」
  夏代「やめて、秋ちゃん(赤らむ)」
  十一「なんだよ、このウチはノゾキだらけじゃねえか」
  秋枝「見られたくなきゃ、自分達の部屋でやりゃいいだろ」
  十一「だって、そりゃ」
  秀子「ほら、やっぱり私が言った通りじゃない」
  冬子「何が?」
  秀子「押さえようと思っても、求め合っちゃうのよ。そうでしょ?」
  十一「バ、バカヤロウ、そんな事ねえよ」
  秀子「無理しちゃって」
  十一「うるせえ!」
  信「まあまあ、マリーもいるんだから、そういう話は後で」
  あまり「私なら平気よ。判ってるもん。愛してるからキスするんでしょ?」
  信「え?んん(咳払い)さ、とにかく食べなさい」
  あまり「はーい」
  夏代「(小声で)あなたが強引だからよ」
  十一「(小声で)お前だって」
 十一と夏代、照れて俯きながら食べる

☆居間
 十一、ビールを飲んでいる。夏代は隣りで紅茶を飲んでいる
  夏代「あなたのせいで、大恥かいちゃったじゃない」
  十一「何言ってんだよ。今日のはお前の方からだったろ」
  夏代「だって・・」
  十一「そんな事言うと、もうしてやらねえ」
  夏代「すぐ、そういう事言うんだから」
  十一「へへへ、して欲しいだろ?」
  夏代「ばか」
 ドアにノックの音
  秋枝「(声)私。裸だったら、早く洋服着てくれよ」
  十一「へ、へんな事言うなよ」
  夏代「さっさと入ってらっしゃいよ」
  秋枝「(入って来て)お邪魔だった?」
  十一「うるせえ」
  夏代「何か用?」
  秋枝「あんた明日の午後、時間空いてるかい?」
  十一「なんで?」
  秋枝「店に来てくんないか。仕事の話があるんだ」
  十一「サンドイッチの写真でも撮らせようってのか?」
  秋枝「常連さんに広告会社の人がいてね、あんたに仕事頼みたいんだってさ」
  十一「え?本当か?」
  秋枝「ああ」
  十一「どんな仕事だ?ギャラは?」
  秋枝「詳しい事は本人に聞いてくれよ。じゃ、ごゆっくり(出て行く)」
  夏代「良かったじゃない」
  十一「え?ああ、これで新婚旅行に行ける、ハハハ」
  夏代「新婚旅行?」
  十一「ああ、俺達まだ行ってなかったろ?」
  夏代「いいわよ、そんなの。それより貯金した方がいいんじゃない?」
  十一「貯金はこれからだって出来るけど、新婚旅行は今しかねえだろ?」
  夏代「うん、でも・・」
  十一「新婚旅行にも連れて行かなかったって、将来責められたくねえからな」
  夏代「そんな事言わないわよ」
  十一「とにかく、俺に任せろって。な?」
  夏代「うん」
 十一が顔を近づけると、夏代は目を瞑る
  秋枝「(また入って来て)それからさ」
 十一と夏代、慌てて離れる
  十一「な、なんだよ」
  秋枝「明日でいいや(出て行く)」
  十一「あの野郎、わざと邪魔しやがって」
  夏代「そんな事ないわよ」
  十一「じゃ、改めて(顔を近づける)」
  夏代「さ、片付けなくちゃ(おぼんを取る)」
  十一「(おぼんに顔をぶつける)」
  夏代「さっさとお風呂入って来て(コップをおぼんに載せる)」
  十一「いてえなあ、もう〜。いいじゃねえかよ」
  夏代「あとで(出て行く)」
  十一「チェッ(寝転び)全部あいつのせいだ!(煙草の箱を壁に投げつける)」
 煙草の箱が当って花瓶が倒れ、中の水が十一の顔の上にこぼれる
  十一「もう〜」

☆朝・栗山邸外

☆リビング
 食事している面々
  十一「(味噌汁を飲んで)美味いなあ、これ」
  夏代「ホント?」
  十一「ああ、こんなの飲んだことない、ハハハ」
  冬子「ただの豆腐のお味噌汁じゃない」
  秋枝「放っときなよ」
  十一「お前、海のそばに行きたいって言ってたよな?」
  夏代「うん」
  十一「じゃあ、どのへんがいいかなあ」
  信「どこか行くのかね?」
  十一「ええ、ちょっと新婚旅行に、へへへ」
  冬子「新婚旅行?」
  十一「ああ、遅ればせながらね」
  あまり「やっぱり熱海?」
  夏代「熱海?」
  あまり「みきちゃんのお姉さんも、新婚旅行で行ったんだって」
  秋枝「はとバスで東京でも一周してきたら?」
  十一「バカヤロウ、おのぼりさんの東京見物じゃねえんだぞ」
  信「予算はあるのかね?少しくらいなら出してもいいよ」
  夏代「それは大丈夫なの。ね?」
  十一「ええ、秋ちゃんから仕事頼まれたんで、その金で」
  信「ほお、秋枝が」
  秋枝「常連さんからちょっとね」
  夏代「秋ちゃん、ありがとう」
  秋枝「まだ決ったわけじゃないんだからね」
  十一「大丈夫だよ。俺の腕をもってすりゃ、ハハハ」

☆「シャングリラ」店内
 十一、入って来る
  秋枝「珍しく時間通り来たね」
  十一「余計な事言うな」
  秋枝「今村さん、これが話してた貧乏カメラマン」
  今村「こんにちわ、今村です」
  十一「大場です、よろしく」
 十一、今村、向かい合って座る
  今村「あなたのことを、神谷さんに伺いました」
  十一「編集長に?」
  今村「ええ、腕は間違いない、そう言ってましたよ」
  十一「そうですか、ハハ(小声で)編集長、毛が薄いくせにいい事言いやがる」
  今村「それで、どうでしょうね?」
  十一「え?そりゃもう、ぜひお願いします」
  今村「そうですか。私どもとしても、新しい感覚が欲しかったもんですからね。大場さんならピッタリですよ、ハハハ」
  十一「そうでしょう、そうでしょう、任しといて下さい、はい、ハハハ」

☆スタジオ居間
 十一、そろばんで計算している
  十一「これがこうなってああだから・・これっぽちしか残らねえのか」
 チャイムが鳴り、ゲン入って来る
  ゲン「先輩、先輩」
  十一「おお、リスト持って来たか?」
  ゲン「もちろんですよ。何たってCMですからね。我が社のトップモデルの写真を、ほら(見せる)」
  十一「これがトップモデルかあ?」
  ゲン「この子なんかいいでしょ?海辺に咲いたコスモスって感じ」
  十一「フジツボみてえじゃねえかよ」
  ゲン「じゃこの子どうです?スラーッとして、人魚みたいでしょ」
  十一「ししゃもにしか見えねえけど・・ま、いいや、お前が一番良いと思うモデル連れて来い」
  ゲン「はい、わかりました。でもやっぱり大手ですよねえ。ロケにも行けるなんて」
  十一「バカヤロウ、ロケ代もギャラの一部なんだよ」
  ゲン「でも、ガッポリ貰ったんでしょ?」
  十一「大した事ねえよ。だからな、削れるところはごっそり削って、できるだけ多く残そうと思って」
  ゲン「まさか、ウチのモデル代じゃないでしょうね?」
  十一「判ってるじゃねえか。でなきゃ、お前のボロ会社なんかに頼むか」
  ゲン「話がうま過ぎると思った」
  十一「お前車借りて来い」
  ゲン「またですか?」
  十一「交通費の節約だよ」
  ゲン「とばっちり受ける方の身になってくれってんだよ」
  十一「何か言ったか?」
  ゲン「別に」
  十一「バッチリ仕事して金稼がなくっちゃ、ハハハ。待ってろよー!」
  ゲン「また始まった」

☆リビング
 食事している面々
  冬子「ええ?デコに?」
  十一「ああ、秀水園の宿代割引してくれるように頼んどいてくれ」
  冬子「図々しいわね」
  十一「干物の土産買ってきてやっから」
  冬子「どうだろ」
  秋枝「私もロケに同行するからね」
  十一「なんで?」
  秋枝「今村さんの代理。あんたの仕事ぶりを、報告しなけりゃならないからね」
  十一「急にそんな事言ったって・・」
  秋枝「イヤなのかよ?」
  十一「そういう訳じゃないけどさ、予算の都合が・・」
  秋枝「男ならブツブツ言うな」
  十一「わかったよ」
  夏代「あんまり無理しないで。私は別にいいんだから」
  十一「お前が心配する事ないよ。バッチリ稼ぐから、二人で思い出作りに出かけよう。な?」
  夏代「うん」
  冬子「どこにでも行ってちょうだい」

☆朝・栗山邸前
 スカイラインが停まり、ゲンがそばに立っている
 十一、夏代、秋枝、家から出てくる
  十一「モデルは?」
  ゲン「後ろに」
  十一「(車を覗き)フジツボか。ま、いいや(助手席に乗る)」
  秋枝「(後ろのドアを開ける)」
  ゲン「秋枝さんも行くんですか?」
  秋枝「クライアントの代理(乗る)」
  ゲン「ああ、なるほど(運転席に乗る)」
  十一「(夏代に)今晩寂しいけど、我慢しろよ。俺も我慢するから」
  夏代「うん、行ってらっしゃい」
  十一「お別れのチューしようか」
  夏代「え?やあよ」
  秋枝「さっさと出した方がいいよ。キリがないから」
  ゲン「あ、そうですね」
 スカイライン走り出す
  十一「(窓から手を振り)元気でな〜生水飲むなよ〜」
  夏代「(クスッと笑う)」

☆伊豆・お花畑
 十一、モデル撮影している。ゲン、レフを持っている
  十一「よーし、こんなもんだろ。場所変えよう」
  ゲン「はいはい」
  十一「あれ、あいつは?」
  ゲン「電話かけに行きましたよ」
  十一「早速ご注進に行きやがったのか」
 秋枝、戻って来る
  秋枝「もう終りかい?」
  十一「場所変えるんだよ」
  秋枝「あ、そう」
 十一たち、立ち去る

☆海辺
 十一、モデル撮影。ゲン、レフを持っている
  十一「(ゲンに)おい、もっと後ろ下がれ」
  ゲン「ええ?これ以上下がったら、ズボンが濡れちゃいますよ」
  十一「そんな事ぐらいで大騒ぎすんな!」
  ゲン「だって・・」
  十一「金がかかってんだぞ、根性入れてやれ!」
  ゲン「わかりましたよ(オズオズと下がる)」
 波が打ち寄せ、ゲンの足元を濡らす
  ゲン「ヒャッ!」
  十一「揺らすな!張ったおすぞ、テメエ」
  ゲン「おお〜、チベタイ」
 秋枝、傍に立って見ている
 
☆夕方・秀水園ロビー
 十一達、戻って来る
  十一「なかなか良い調子だったろ?」
  ゲン「こっちは靴までビショビショですよ」
  十一「いつまでもグダグダ言うな!」
  ゲン「ひどい仕事引き受けちゃったなあ」
  十一「口を慎め。クライアント代理の前だぞ」
  ゲン「あ、そうでした」
 夏代、冬子、秀子ソファーから立ち上がる
  十一「あれ?お前、どうしてここにいるんだよ?」
  夏代「秋ちゃんから電話貰ったのよ」
  秋枝「折角海辺に来たんだから、ついでに新婚旅行を済ませたらどうかと思ってね」
  十一「ええ?」
  秋枝「それよりフー子、あんた達はどうしたんだい?」
  冬子「デコに割引きの事話してるうちにさ」
  秀子「どうせなら私達も行こうかって、へへへ」
  秋枝「気の利かない連中だな、全く」
  十一「こんな新婚旅行、聞いたことねえぞ」
  秀子「でもさ、かえって思い出になるんじゃない?」
  冬子「そうよ」
  ゲン「じゃあ、今晩は宴会といきますか?」
  秀子「そうね、お母さんに料理頼んでくる」
  冬子「私も行くわ」
 冬子、秀子、ワイワイ言いながら奥へ
  秋枝「何か、とんでもない事になっちゃったな」
  十一「全くどうなってんだよ」
  ゲン「いいじゃないですか」
  十一「(頭を叩く)」

☆秀水園・ほうれんそうの間
 十一、夏代、秋枝、ゲン、お膳の周りに座っている
  夏代「(お茶を注ぎながら)モデルさんは?」
  ゲン「今夜、11PMの生CMがあるんで帰りました」
  十一「テレビ見た奴は、さぞかし夢見が悪いだろうよ」
  ゲン「それより、部屋割りはどうしますか?」
  十一「部屋割り?」
  ゲン「普通なら僕と先輩で一部屋、女性達で一部屋ですけど」
  秋枝「それじゃ新婚旅行にならないだろ」
  ゲン「じゃ、先輩と夏代さんが一部屋、僕と女性達で一部屋ということですか?」
  秋枝「あんた殺されたいの?」
  ゲン「とんでもない!」
  秋枝「姐御達が一部屋、私とフー子達で一部屋」
  ゲン「僕はどこで寝るんですか?」
  十一「お前はロビーにでも寝てろ」
  ゲン「そんなあ」
  夏代「もう一部屋取ればいいわよ」
 冬子、秀子、入って来る
  秀子「料金の倍の料理出してくれるって」
  冬子「新婚旅行だって言ったら、ビックリしてたわ」
  十一「あたりめえだ。団体の新婚旅行なんて」
  秀子「夜はお邪魔しないわよ。ね、フー子」
  冬子「そう、遠慮なくどうぞ」
  十一「フン!(立ち上がる)」
  夏代「どこ行くの?」
  十一「煙草買うの!(出て行く)」
  夏代「(後を追って出て行く)」

☆ロビー
 十一、自販機で煙草を買っている
  夏代「(傍に来て)怒ってるの?」
  十一「そういう訳じゃないけど・・新婚旅行は二人でしっぽりとさあ・・判るだろ?」
  夏代「そりゃ私だって二人で来たかったけど」
  十一「これじゃ気分出ねえよ」
  夏代「でも、こういうのも変わってていいかもしれないわよ」
  十一「そうかなあ」
  夏代「それに・・」
  十一「それに?」
  夏代「夜は二人っきりになれるじゃない」
  十一「そりゃまあ、そうだけどさ」
  夏代「折角来たんですもの。楽しく過ごしましょうよ」
  十一「うん、まあ。お前がそう言うなら」
  夏代「ね、散歩しない?」
  十一「散歩?」
  
☆秀水園・庭
 十一と夏代、歩いている
  十一「(煙草に火を点ける)」
  夏代「ねえ、この前寝ぼけた時、ずっと俺の傍にいてくれ言ったでしょ?」
  十一「忘れた」
  夏代「白状しないと、近寄らせないわよ。さ、言って」
  十一「だから・・それは・・・」
  夏代「早く」
  十一「ずっと傍に・・ムニャムニャ」
  夏代「え?聞こえないわよ」
  十一「(小声で)俺の傍にいてくれ・・」
  夏代「もう1回!」
  十一「えー、面倒くせえ!(ヤケクソのように大きな声で)ずっと俺の傍にいてくれー!」
  夏代「(飛びつき)嬉しい!」
  十一「お前はどうなんだよ?」
  夏代「決ってるでしょ。死ぬまで離れない」
  十一「そうか、ハハハ」
 十一、夏代を抱きしめてぐるぐる回る

☆部屋・ベランダ
 冬子、秀子、庭を見下ろしている
  冬子「どうだろ。私達がいる事なんて忘れちゃったみたい」
  秀子「いいじゃないの。今が一番楽しい時期なんだから」

☆宴会場
 刺身の船盛りなどがお膳に並べられている
  冬子「(刺身を食べて)美味しい」
  秀子「当たり前でしょ(食べる)」
  ゲン「(ビール瓶を持って)先輩、どうぞ」
  夏代「(鯛の刺身をとって)はい」
  十一「(食べて)美味い」
  夏代「今度はどれにする?」
  十一「甘エビ」
  ゲン「先輩!」
  十一「え?何か言ったか?」
  秋枝「放っときなよ(コップを差し出す)」
  ゲン「(ビールを注いで)調子狂っちゃうな、全く」
  冬子「私達は慣れちゃった。毎晩だから」
  ゲン「どうしてなのかな。僕と先輩じゃ大して違わないのに、先輩だけいい思いしちゃって・・」
  秋枝「安心しな。趣味の悪い女は世の中にたくさんいるから」
  ゲン「そりゃないじゃないですかあ」
  秋枝「とにかく飲みなって(ビールを注ぐ)」
  ゲン「(飲みながら横目で十一達を見る)
 十一と夏代、顔を寄せて話している
  夏代「そんなに飲んで大丈夫?」
  十一「どうって事ねえよ、これくらい」
  夏代「この前、二日酔いで大騒ぎしたのは誰でしたっけ?」
  十一「そんなことあったか?」
  夏代「助けてくれって私に泣きついたでしょ」
  十一「そうだっけ」
  夏代「トボケちゃって」
  十一「明日そうなったらチューしてくれ、すぐ治っちゃうから(顔を近づける)」
  夏代「甘えないで(オデコを小突く)」
 十一と夏代、楽しげに笑いあう
 秋枝、冬子、秀子、ゲン、手を止めて二人をじっと見る

☆廊下
 秋枝、冬子、秀子、ゲン、それぞれの部屋へ
 十一と夏代も部屋に入る

☆ほうれんそうの間
 十一と夏代、入って来る
  十一「一緒に風呂入ろうか?」
  夏代「そればっかり」
  十一「新婚旅行なんだから、いいだろ」
  夏代「じゃあ、今日だけ」
  十一「そうこなくっちゃ」
 十一は両腕で夏代を抱き上げ、風呂場に入る
  
☆夜の海
 波がザザーと打ち寄せる

☆さやいんげんの間
 秋枝、冬子、秀子、布団に寝ている
  冬子「今頃どうしてるかな?」
  秀子「甘く語り合ってるんじゃないの。君は僕の太陽だ、とかさ」
  冬子「プッ(吹き出す)あの顔で?似合わないわよ」
  秀子「恋してる男は誰でも詩人になっちゃうのよ」
  冬子「ふ〜ん」
  秀子「そして女は甘い言葉に酔いしれて・・そこから錯覚が始まるわけよ」
  冬子「錯覚?」
  秀子「恋は最大の錯覚なの」
  冬子「へえ〜」
  秋枝「さっさと寝なよ」
 冬子、秀子、首をすくめる

☆れんこんの間
 ゲン、布団に寝ている
  ゲン「羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹、羊が四匹・・」
  
☆ほうれんそうの間
 十一と夏代、別々の布団に寝ている
  十一「明日、海の方に行ってみようか?」
  夏代「うん・・でも不思議ね」
  十一「何が?」
  夏代「あなたとこんな風になるなんて」
  十一「まあな」
  夏代「初めて会った時の事、覚えてる?」
  十一「初めて会った時?・・あ!お前が泥棒呼ばわりしたから、ひでえ目にあったんだぞ!」
  夏代「しょうがないじゃない。アラブゲリラにみいなヘンな男が、いきなり人のバッグに手突っ込むんだもん」
  十一「それはこっちの言う台詞だよ。いけすかねえ女に、妙な言いがかりつけられてさ」
  夏代「それが、こんな風になるなんて、フフフ」
  十一「ああ・・こっち来いよ」
  夏代「うん(十一の隣りへ)」
  十一「(肩を抱き)後悔してないか?」
  夏代「うん。あなたは?」
  十一「俺か・・ちょっと後悔してる」
  夏代「え?」
  十一「勘当されてなきゃ、もう少し早くお前に会えたのにさ」
  夏代「うん(胸に顔を埋め)今日は新婚初夜ね」
  十一「ま、2度目の初夜って事だな」
 十一、枕元の電気を消す

☆朝の海
 朝日でキラキラ光っている

☆秀水園ロビー
 十一たち、荷物も持って降りて来る
  秋枝「それじゃ、私達は電車で帰るから」
  冬子「せいぜい思い出作りに励んでね」
  夏代「ええ」
  ゲン「先輩、お先に」
  十一「どうしたんだよ、情けない顔して」
  秋枝「二日酔いだろ」
  十一「ただ酒だと思って、意地汚く飲むからだ」
  ゲン「違いますよ。寝不足なんですよ」
  秀子「早く寝るって、11時頃部屋に帰ったじゃない」
  ゲン「そうなんですけどね。どうも気になって」
  十一「何が?」
  ゲン「先輩たち、どうしてるかなって。へへへ」
  十一「バカヤロウ!どうしてお前は、薄汚い想像しかできねえんだ!」
  ゲン「耳元で怒鳴らないで下さいよ、頭がガンガンして」
  十一「もっとガンガンさせてやる(頭を叩く)」
  ゲン「やめて下さいよ〜」
  十一「この、この」
  秋枝「やめなって。じゃ姐御、ごゆっくり」
  夏代「秋ちゃん、ありがとう」
  秋枝「よしなよ、水くさい(十一に)おい」
  十一「え?」
  秋枝「(8ミリを渡し)これ使いな」
  十一「こんなもん、どうしたんだよ」
  秋枝「お客さんに借りたのさ。新婚旅行に8ミリはつきもんだろ?」
  十一「そんなもんかね」
  秋枝「じゃあな(出て行く)」
 冬子、秀子、ゲン、玄関前のタクシーで走り去る
  十一「あの野郎、シャレたまねしやがって」
  夏代「秋ちゃんらしいわ」
  十一「ほんじゃまあ、思い出作りに出かけるか?」
  夏代「うん」

☆スカイライン車中(BGM「ケンとメリー」)
 運転している十一、煙草をくわえ火を点ける
 助手席の夏代、パインジュースの缶に穴を開けひと口飲む
  夏代「飲む?」(声は聞こえない)
  十一「ああ」(声は聞こえない)
  夏代「(口元に缶を持っていき飲ませる)」
 楽しげに笑いあう二人

☆海沿いの道路
 疾走していくスカイラインGT  

☆遊歩道
 十一と夏代、歩いてくる
  十一「(8ミリを手に)この辺に立ってみろよ」
  夏代「え?お地蔵さんの前じゃない」
  十一「あ、そうか」
  夏代「あそこに見晴らし台があるわ」
  十一「ほんとだ」

☆見晴らし台
 夏代は手摺のところに立ち、十一は8ミリで撮影している
 老夫婦が通りかかる
  十一「あ、すいません。撮ってくれますか?」
  夫「ああ、いいですよ」
  十一「(夏代の隣りに立つ)」
  夫「ボタンはどこかな」
  十一「前の方にあります。ああ、それです」
  夫「(撮影する)」
  十一「どうもありがとうございました(8ミリ受け取る)」
  妻「ご新婚ですか?」
  十一「ええ、まあ」
  妻「綺麗な奥様ですこと」
  十一「ど、どうも」
  夫「お幸せに」
 老夫婦、立ち去る
  夏代「素敵なご夫婦ね。あんな風になれたらいいなあ」
  十一「ああ」
  夏代「子供や孫に囲まれて・・」
  十一「あのさ、子供は二人ぐらいにしようよ」
  夏代「神様に聞かなきゃ判んないでしょ」
  十一「そうだけどさ、あんまり多いと食わせていけるかどうか・・」
  夏代「情けないわね」
  十一「それにさ、お前がネット被ってネンネコ背負ってる姿なんて見たくねえしさ」
  夏代「まだ言ってる、フフフ」
  十一「だから、子供は二人ぐらいで。な?」
  夏代「はいはい、わかりました。お父さん」
  十一「何か段々所帯じみてくるなあ・・」
  夏代「後悔してるの?」
  十一「そうじゃねえけどさ。青春時代にオサラバって感じがして」
  夏代「その気になれば、幾つになっても青春時代でいられるわよ」
  十一「じゃあ、今のままでいいのか?」
  夏代「うん」
  十一「俺、何するかわかんねえぞ」
  夏代「それでもいい。だって、今のあなたが好きだもん」
  十一「(後ろから抱きしめて)俺も今のお前が好きだ(顔を近づける)」
  夏代「だめ、人が来るわ」
  十一「いつまで経っても、ウブだな」
  夏代「あなたが、いやらしいの」
  十一「へへへ、これが男よ」
  夏代「ばーか(十一の鼻をひねって逃げる)」
  十一「イテッ、こいつ(追い駆ける)」

☆海・砂浜
 停まっているスカイライン
 砂浜で追いかけっこしている十一と夏代
 十一、追い駆けながらカメラを構えシャッターを切る
 笑う夏代、アッカンベーをしている夏代、口を尖がらしている夏代、髪をかき上げる夏代・・
 十一、追い駆けている途中で転んで倒れる
 夏代、早く来るように手招き
 十一、起き上がらない
 夏代、心配げに近寄る
 十一、突然起き上がり夏代に手を伸ばす
 夏代、笑いながら逃げる
 十一、笑いがら追い駆ける
 太陽の光りが降り注ぐ下、走って行く十一と夏代
―おわり―

>戻る