第62話「バレンタインデーの十一」 放映日:1975年2月12日(水) 脚本:いれぶん
★住宅街の道(夕方)
十一と玄が歩いている。
玄 「先輩、何持ってんですか?。」
十一「ん、これ、これはだな、ほれ。」包みを開けると、チョコが出てきた。
玄 「あ、チョコじゃないですか…当然あの方からの…。」
十一「まあな。」
玄 「チョコボールの親玉みたいなのがいっぱい入ってますね。」
十一「うん。」チョコボールを一個取り出し。
十一「最近はこうやって食べるのがはやってるのだ。」チョコボールを真上に投げ、口を開けて受ける。
玄 「先輩、うまいうまい!。」
十一「ほいっ!。」何個も続ける。
電線に鳩が止まっている。(アップ)
十一、鳩の真下に来た。
十一「ほいっ!。」チョコボールをまた真上に投げた。
とっ、チョコボールと同時に白と黒が混在した物体が十一の口に入る。
十一「ん・・・・・。」
玄 「先輩、上。」
十一、見上げると電線の鳩が目にとまる。
十一「うぉえ〜っ。」すぐ吐き出す。鳩の糞が一緒に入ったのだった。
十一「ぐえん、しゅぐにみぃずうぉしゃぐぁせ。しゅいでょうであ。!」
玄 「何、“玄すぐに水を探せ水道だ”ですって。」慌てて、周りを見まわす
十一も周りを見る。
玄 「あ、先輩、あそこに。」前方30メートル程の所に、公園の入り口らしきものが見える。それを指差す。
十一「わ、ひょんとだ(本当だ)。」口を押さえながら、駆け寄る。
玄、ついてくる。
★公園内
十一、公園の水道へと飛んで行き、うがいをする。
十一「あー、まずい、後味悪いぜ全く。」
玄 「ぷっ!。」横を向き、笑いをこらえている。
十一「あれ!。」公園内のベンチに気が付く。
玄 「あ、あれ夏代さんだ。」
ベンチに夏代と男性が、レポート用紙か何かを持って、一緒に座っている。
玄 「先輩、誰なんですかね。」
十一「そうだ、詩を書いてる、仲間かもしれねえな。」
十一と玄、ベンチに向かう。
十一「よう。」
夏代「え!。」レポート用紙に何かを書いてたのを辞め、前を向く。
夏代「あら、十一さんじゃない、玄さんも。」
玄 「こんにちわ。」
夏代「どうしてここへ?。」
十一「いや、偶然通りかかってたら、君を見つけて。」
夏代「あら、そう。…あ、彼は詩を書いてる仲間の石井さん。」隣の男性を紹介する。
十一「あ、始めまして、夏代の夫です。」
玄 「その後輩の池田です。」
石井「始めまして、あ、あなたが夏代さんの…、お噂は聞いてます。」
十一「あ、そうですか、どうも。」
夏代「ここで詩を考えているのよ、いろんな題材があるのよね。 公園には、子供達もいるし、鳩もいるし。」
十一「鳩!、鳩はもういいよ、こりごりだよ!。」
夏代「あら、どうして、鳩は平和の象徴なのに…、襲われでもしたの?。」
十一「いやいや、何でもない、何でもない、気にしないでそのポっポちゃんを使って詩を書いてくれたまえ、はは!、はは!。」
夏代「あら、その手に持ってるものなあに?。」
十一「こ、これは…。」後ろへ隠そうとする。
玄 「あれ、先輩そのチョコ夏代さんからのプレゼントじゃなかったんですか?。」
十一「おい、玄言うな!。」
夏代「チョコですって。」
十一「まあ、はは!、はは!。」 油汗を浮かべている。
夏代「誰から貰ったの?。」
十一「ちょっとね、以前に写真撮らせてもらった事があるモデルの子に貰った、義理チョコだよ、義理チョコ。」
夏代「許せない、義理チョコでも、私以外からチョコ貰うなんて!。」
十一「おい、そんなー!。」
夏代「せっかくあなたにあげようと思ってたチョコ、石井さんにあげるわ。」
石井「本当ですか、夏代さん!。」
夏代「ええ。」夏代バックから包みの箱を取り出し、石井に渡す。
石井「うわあ嬉しいな、ありがとうございます!。」
十一「おい、まてよ!、それ…。」
夏代「さあ、詩を考えるから、もう行って。」 さえぎる。
十一「夏代ー!。」指をくわえて、半泣き顔になる。
夏代「うそよ!、へへ…(舌を出す。)、部屋に帰ってごらんなさい、あなたにも用意してあるから。」
十一「本当かそれ、夏代!ヤッホー!!(飛びあがる)。」
玄 「先輩、よかったじゃないですか。」
二人、急いで公園を去って行く。
夏代「ごめんなさいね、ということであなたのは義理チョコなの。」
石井「いえ分かってますよ、夏代さん!。」少しがっかり気味である。
★栗山邸・玄関
十一と玄入ってくる
十一「ただいま!」
玄 「おじゃまします。」
十一「玄、お前までどうして、入って来るんだよ。」
玄 「いや、先輩、夏代さんにどんなチョコ貰ったか拝見しようかなと思って。」
十一「好奇心旺盛だなおまえは、勝手にしろ。」
二人、2階の十一夫婦の部屋へ向かう。
★十一夫婦の部屋
ドアを開けて入る二人
玄 「せ、先輩!。」
十一「なんじゃー、こりゃー!。」
台の上に、縦1メートル・横1メートル・厚さ10センチ程の大型チョコがある。
十一「お、おい、これかよ!。」目が飛び出すほど驚いている。
玄 「先輩、凄いじゃないですか、まさに義理チョコとは言えない本チョコですよ。」
十一「おい、どうやって食べるんだ、これ。」
玄 「当然、かぶりつくしかないじゃないですか。手伝いますよ。」チョコの方へ近づく。
十一「よせ玄、俺一人で食う。」玄をさえぎり、かじりつく。
玄 「け、ケチだな、さあ帰って義理チョコでも貰いに行くか。」去る。
十一、必死でチョコを食べ続ける。
いつのまにか、ドアの隙間から、覗いて笑っている阿万里と冬子。
★十一夫婦の部屋(夜)
ダブルベッドで寝そべっている、十一と夏代。
夏代「あら、十一さん、鼻血が…。」
十一「えっ!」鼻を押さえるが、両方の鼻から大量に出始める。
夏代「これで押さえて。」手ぬぐいを差し出す。
十一「だめだ、止まんね−!」手ぬぐいもたちまち真っ赤に。
夏代「どうしよう、十一さんたら、まだ始めてもいないのに興奮しちゃって。!」
十一「なんじゃー、そりゃー!。」真っ赤になった両手を顔に付ける。
(THE END)