スペシャル1「番外編」 放映日:1975年4月1日(火)深夜 脚本:てつまにあ
☆道路
十一、ゲン歩いている
ゲン「会場は渋谷でしたね?」
十一「ああ」
ゲン「いやあ、これで先輩も一人前ですね。なんたって写真コンクールで優秀賞なんですから」
十一「フン!優秀賞ぐらいでガタガタ騒ぐな。大物はな、もっとデ〜ンとしてるんだよ」
ゲン「デ〜ンとね・・・あ、そうだ。途中で銀行に寄ってくれますか?」
十一「銀行?」
☆渋谷裏通り
十一「おい、こんなとこに銀行があんのか?」
ゲン「(ビルの中に入る)」
十一「(怪訝な顔で後に続く)」
☆ビルエレベーター前
十一、ゲン下りてくる
十一「ここが銀行か?」
ゲン「(ドアの前に歩いて行く)」
ドアの横に「大判社」の張り紙
十一「なんだ、サラ金じゃねえか」
ゲン「わが社のような弱小企業にはね、銀行は貸してくれないんですよ」
十一「ケッ!しけた話」
☆「大判社」中
文彦、そろばんを弾いている。雨宮、安子、ボーっとしている
ゲン「(ドアを開けて中を覗く)」
文彦「(気づいて)何しに来がったんだ、リキ」
ゲン「リキ?あの〜私池田と申しますが・・・」
文彦「え?あ、ああ。失礼しました。で何か?」
ゲン「あのお金をちょっと・・」
文彦「あ、お客様ですか。雨宮!中にお通しして」
雨宮「さあどうぞ、どうぞ」
ゲン、十一入って来る。雨宮、十一の顔を見て?となる
文彦「わが大判社では上は百万から下は百円まで、すぐにバッチリご融資致します。でいかほど?」
ゲン「20万ばかり・・・」
文彦「身分証明書お持ちですか?(ゲン手渡し)はい、承知しました。おい、やっ子」
安子「(金庫から現金を持ってくる)」
文彦「はい20万でございます。こちらは借用書です。利息は月一割という事で」
ゲン「あ、どうも(現金を胸ポケットにしまい)それじゃ、先輩(と促す)」
十一、ゲン出て行く。雨宮、文彦の顔を繁々と見る
文彦「雨宮、俺の顔を見てる暇があったら、取立てに行って来い!」
雨宮「なあ、後ろにいた男、お前にそっくりじゃなかった?」
文彦「無礼者!こんな高貴な顔がそこらにあってたまるか!」
☆道路
十一「いよいよお前も借金地獄だなあ〜」
ゲン「やな事言わないで下さいよ。だけどさら金の男、先輩にそっくりでしたね?」
十一「バカヤロ、テメエ。あんないかがわしいヤツと一緒にすんな!」
☆写真展会場
受賞作品とともに、歴代最優秀賞受賞作が飾ってある。その中に稲葉勇作の作品
ゲン「先輩、先生のがありますよ」
十一「この頃の先生は凄かったよなあ」
ゲン「あ、今年の最優秀はこれですね。(名前を見て)小早川薫。先輩知ってますか?」
十一「社会派のヤツだろ。この前日本カメラに載ってたよ」
菊枝「(写真の前に来て)キャップ!薫くんの写真あったわよ」
梅子「どれ?(見て)へえ〜大したもんじゃない」
菊枝「だから私が言ったでしょ。彼のカメラアイは抜群だって」
薫「(二人のそばに来て)来てくれたのか。ありがとう」
和やかに談笑する3人
十一「(横目で見て)フン!女とイチャイチャしやがって」
ゲン「いやあ〜顔は先輩に似てますけど、向こうの方がずっと男前ですねえ」
十一「(頭を叩く)行くぞ!」
☆道路
ゲン「やけに先輩に似た人と会いますね、今日は」
十一「似てやしねえよ」
ゲン「でも自分に似た人間が5人いるって言いますからね」
十一「ケッ!」
声「強盗だ!」
十一、ゲン振り返る。カバンを持った男が走って来る
十一「ゲン、捕まえろ!」
ゲン「僕が!そんなあ〜」
十一「いいからいけ!(ゲンを突き飛ばす)」
ゲン、男とぶつかり、二人とも道路に倒れこむ。十一素早くカバンを取ると、二人の上に乗りカバンで男の頭をぼかすか殴る。交番の警官駆けつける
―しばらくのち―
パトカーが止まり警官が現場検証している。覆面パトカーが来て、コート姿の男が降りてくる
鈴木「課長、あちらの二人が犯人を取り押さえました」
相馬「(十一とゲンをチラッと見て)署で事情聴取させてもらえ(煙草に火をつける)」
鈴木「はい」
十一「なんだあいつ?」
鈴木「(十一とゲンに近づき)申し訳ありませんが、事情聴取したいので署に来てもらえますか」
十一「これからですか?」
鈴木「ええ、課長命令なもんですから(パトカーのドアを開け)さ、どうぞ」
十一「ついてねえな」
十一、ゲンパトカーに乗る。周りを囲んでいる野次馬の中に安武右京と内田の姿
右京「あれが犯人か。下品な顔してるやがるなあ」
内田「一人なんかお前とそっくりだしなあ」
右京「なに?」
内田「いやいや・・・それより、こんなとこで手間取ってるとチー坊のお祝いに遅れるぞ」
右京「そうか、こんな事してらんねえんだ」
右京と内田、足早に去る
☆パトカーの中
ゲン「あの、さっきのコート着てた方は偉い人なんですか?」
鈴木「ええ、うちの刑事課長なんですよ」
ゲン「へえ〜、エリートなんでしょうね」
鈴木「まあ、私のような万年ヒラ刑事とは違いますね」
ゲン「はあ〜、顔は似てても全然違うんですねえ(十一を横目で見る)」
十一「うるせい!」
かくして十一の一日は終ったのであった・・・チャンチャン